「酒母」とは?
「酒母」と「もろみ」その違いとは?意外と知られていなかった!
「もろみ」とは酒母・米麹・蒸米・水を混ぜ合わせ、発酵させて造ったもののことで、日本酒の完成間近なものを指します。
このもろみを濾すことで日本酒と酒粕に分けられます。
このもろみを造る際に必要なものが「酒母」です。
酒母の作り方って?わかりやすく解説します!
酒母とは、麹、蒸米、仕込み水を混ぜたものに酵母を入れて培養したもののことです。
酵母には糖分をアルコールに変化させる発酵作用があります。日本酒造りにはこの酵母が大量に必要になるため、育てて増やす必要があります。
この酵母は非常にデリケートで、他の微生物や雑菌が入り込むとすぐに死んでしまいます。
しかし、酵母は酸性に強い特徴があります。一方で他の微生物や雑菌は酸性に弱いため、酒母の環境を酸性に保つことが重要になります。ここで大きな役割を果たすのが乳酸です。
乳酸は、酒母を酸性に保って酵母を育てつつ、日本酒造りに不要な雑菌を駆逐する働きがあります。
この乳酸の加え方によって、酒母造りは2種類に分類されます。
一つ目は生酛(きもと)系酒母です。生酛系酒母は、自然界に存在する天然の乳酸菌を取り込み、乳酸菌が造り出す乳酸によって酒母を育てたものです。
天然の乳酸菌を相手にするため、非常に手間や時間がかかります。酒母の完成までの期間はおよそ一ヶ月です。
乳酸が十分に生成される前に雑菌や悪影響を及ぼす微生物が入らないように、蔵の環境もしっかりと整備する必要があります。また、酒母の監視も頻繁に行わなければなりません。
生酛系酒母のうち、山卸しと言われる作業を行うものを生酛造りといいます。
山卸しとは、酒母に投入された蒸米をすりつぶす作業のことです。この工程は、デンプンの糖化や乳酸の生成を促す狙いがあります。
桶に入った蒸米や米麹を液体になるように棒ですりつぶしていきますが、これを冬の寒い中、夜通し行うためかなり辛い作業です。
山卸しの工程ではお米を溶かすことが重要ですが、酒造好適米の発達や研究の成果により、山卸しをしなくてもお米を溶かすことができるようになりました。
この山おろしの工程を省いたものを山廃造りといいます。
生酛造りや山廃造りの酒母は強靭で、仕込みの最後まで発酵を行います。そのため濃厚でコクのある味わいながらも、酸味があるキレのいい日本酒が多い傾向があります。
二つ目は速醸系酒母です。速醸系の酒母造りは酵母と同時に人工の乳酸を添加するため、安全に酒母造りができます。完成までの期間は約二週間と、生酛系よりも短期間で完成します。
香りが立ちやすくなるほか、味わいが軽くさっぱりとした淡麗な日本酒になる傾向があります。現在はこちらが主流となっており、日本酒全体の9割が速醸系です。
速醸系酒母は大きく三つに分けられます。
一つ目は普通速醸酒母です。こちらが最も一般的な製法です。
タンクに麹、仕込み水、乳酸、酵母を入れた後、蒸米を投入します。蒸米が柔らかくなったら、かき混ぜたり温度を調節して酵母の繁殖を促進させます。
仕込み直後の酒母の温度はおよそ20℃程度ですが、これを1~2日ほど、10℃以下の低温状態にします。二週間ほどで完成です。
二つ目は中温速醸酒母です。普通速醸酒母との違いは、酒母の仕込みの後に温度を下げない点です。仕込み直後の酒母をそのまま保温するのが特徴です。
仕込みの時期や気候、目標の酒質によってこの製法がとられることがあります。およそ一週間程度で完成します。
三つめは高温糖化酒母です。この製法の特徴は、仕込みに使う水の温度が約55℃と高いことです。
高い温度を保つことにより、蒸米が溶けやすくなったり、雑菌などを死滅させることができます。
まず蒸米と麹に仕込み水を加え糖化させます。その後40℃程度まで冷やし、乳酸を加えてさらに冷やします。
20~25度程度まで冷やしたら、酵母を入れて培養していきます。完成までの日数は一週間程度です。